映画レヴュー

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は、余命幾ばくもないふたり組のちょいと切ないおとぎ話ロード・ムービーだ。

脳腫瘍と骨肉腫。不治の病にかかってしまって、余命幾ばくもないふたりの若い衆が、入院した病院で、たまたま同室になって、たまたま見つけたウオッカの勢いで、たまたま駐車場に停めてあったギャングの1963年式メルセデス・ベンツ230SLのカブリオ…

『ミステリー・メン』は、一回半ひねりの結構笑えるB級パロディー映画だった。

このお馬鹿コメディ、劇場未公開らしい。この前の『ギャラクシー・クエスト』なんかと同系列の一回半ひねりの結構笑えるB級パロディー映画だった。スーパーヒーローに憧れて、自分らもヒーローになりたいと熱望していヒーロー予備軍というか2軍選手たちの…

『フェイク』は、アル・パチーノがへタレなヤクザ者を見事に演じ切ったことに感心した。

アル・パチーノが、レフティというあだ名のしけた中年マフィアを見事に演じていた。人を見る目はあるつもりだ。最初に出て来たときから、今回の役は、相当しょぼくれた男だと感じた。なにしろ初っ端から目が泳いでいた。この男、過去に26人も殺めている。…

『ギャラクシー★クエスト』で笑えるためには、この手の笑いに対する受容体のようなものは、特に必要ない。

この映画で笑えるためには、この手の笑いに対するある種の受容体のようなものがカラダの中にあることが必要みたいだ。残念ながらそれがなかった。箸が転んでも腹を抱えて笑える15・6の女子高生と違うから、ま、仕方がないといえば仕方がないが・・・。 も…

『ドッグヴィル』の絵作りの奇天烈さは、テーマの奇天烈さからひねり出された、ある種必然の産物みたいだった。

こんな奴(女)いないだろうというのが、見終わった時点での率直な感想だ。どんな映画にも、カタルシスというものがあるけれど、誰もこんなエンディングを期待していない。しかし、「これ以外にどんなエンディングがあるというのだ?」と監督(脚本も書いて…

『さらば、わが愛~覇王別姫』は、堂々たる映画だった。傷つき、お互いを傷つけ合った男女の一生ものである。

堂々たる映画だった。京劇という伝統芸能の世界に生きたふたりの俳優、ひとりは歌舞伎で言えば、市川団十郎のような立ち役で、もうひとりは新派の花柳章太郎のような女形だ。それから、元娼婦で、気も強いが情も濃い女性が、団十郎の嫁だ。この3人が、歴史…

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、なんとプラトン哲学の「饗宴」が元ネタなんだ。

決してお上品じゃないものがキライではない。はっきり言って、結構好きです。すんません。この映画も最初は興味本位で観ました。ロックンロールといったら、どちらかというとパッパラパーの音楽という世間のイメージがあるが(ないか?)、この映画の主題歌…

『ノスタルジア』は、淡々狸映画の極めつけだ。ま、映画館で観たら確実に寝てしまうだろう。

黒澤明も、フェリーニも、この監督も、どいつもこいつも歳をとって、「よっ、巨匠」と言われるようになると、無茶をする。ほとんど他人には理解不能な私小説みたいな私映画を撮ろうとするのだ。2002年に開催された「生誕70周年記念アンドレイ・タルコフ…

『ルル・オン・ザ・ブリッジ』は、あらんことか、エンディングに御法度というか、禁じ手を使っていた。

この映画、愚妻と一緒に観ていたのだが、途中で「なぁ、この映画、ちゃんとオチあんの?!」と念押しするものだから、「心配せんでいい。最後になったら、ああ、なるへそ、そういうことかという、いいオチがあるはずだ。この前の『スモーク』もそうだったろ…

『トゥルー・ロマンス』は、何となく暴力に対する恐怖感とか嫌悪感みたいなものが麻痺してくる。

「おいおい」という感じだった。大体、サニー知葉の3本立てカンフー映画に、あんなケバいの若い格好の女の子が、それもひとりで観に来る筈がない。なにしろ、冬だというのに肩出し胸あきの真っ赤なドレスに毛皮のコートだ。一目見たらその業界のお方と分か…

『クライム&ダイヤモンド』は、ま、ちょっとうまく話がまとまりすぎたキライがある。

いくら相手が映画好きだといっても、椅子に縛りつけられて、銃を突きつけられて「なにかおもしろい話をしろ」と言われても、おもしろい話なんか思い浮かばないんじゃないか?それに、この毒舌ジムという殺し屋、何故さっさと仕事を済まして、好きな映画を観…

『ブルース・ブラザース 』のような映画史上稀に見る名作を見逃していたのは、一生の不覚だった。

こういう映画史上稀に見る名作を見逃していたのは、一生の不覚だったと言っても過言ではない。14の時にビートルズと出会って以来、精神的には無敵のロックンローラーとして生きてきたつもりだったが、寄る年波には勝てない。最近はロックンローラーという…

『アメリカン・ヒストリーX』は、エンドロールの間、黙祷していた。

この前の『シティ・オブ・ゴッド』も強烈だったが、これもキツイなぁ。ちょっと唸ってしまった。エンドロールの間も、黙祷していた。人種差別に真っ正面から取り組んだ映画というのは、エンディングが難しいなぁ。この映画も、映画会社とぶつかって、監督が…

『シティ・オブ・ゴッド』は、あくまでドンパチシーンに特化していた。これもひとつの見識かも知れない。

ブラジル版『仁義なき戦い・悪ガキ編』というところか・・・。全編ドンパチばかり。それにしてもビックリ仰天。この映画は実話に基づいているらしい。リオデジャネイロのはずれに国が作ったスラム街「神の街」で、1960年代から70年代にかけて、貧困と…

『フィッツカラルド』の主役、クラウス・キンスキーは別格だ。ものが違う。

大変なものにぶち当たってしまった。こういう常軌を逸した話は大好きなんだ。それにしても、この映画の主人公の役をやっているクラウス・キンスキーは型破りというか、奇才というか、破天荒というか、奇天レッツのパッパな個性だ。ジャック・ニコルソンをは…

『妹の恋人』は、ま、罪がなくてよかったんじゃないのか・・・。

とうとうジョニー・デップとジュリアン・ムーアが共演してる映画にぶち当たってしまった。ふたりとも、そんなに贔屓も貶しもしていないつもりだったのだが、冷静に考えれば、ジョニー・デップは『ラスベガスをやっつけろ』の、はちゃめちゃジャンキーぶりに…

『ビッグ・リボウスキ』のように出てくる奴の誰ひとりとしてまともじゃない映画も珍しいんじゃないか?

『シービスケット』では、渋い馬主役を、『フィッシャー・キング』では、対人恐怖症のDJ役をやっていたジェフ・ブリッジスが、この映画では。ヒッピーのなれの果ての甲斐性なしでその日暮らしの男だった。髪型といい、服装といい、かつてのアメリカン・ニ…

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』は、ヒネかぼちゃの観客は想定外なんだろう。

まずまずの出来だった。全体に暗めの画面で、明るいファンタジー映画というより、ミステリー仕立てになっていた。これまでの2作はまんま子供向きだったが、今回は少しだけ大人も楽しめる映画になっている。学校行事のシーンが少なかったこともその理由のひ…

『トラフィック』は、タップダンスでご陽気にという終わり方もできんだろうから、ま、妥当な終わり方じゃないか。

結末を知ってしまったら、観る気にならないというタイプの映画ではない。こういう社会派ドラマは、安直にハッピーエンドにするワケにもイカンだろうし、かといって、あまり茫然自失となるような悲惨な終わり方も、すかっと爽やかに皆殺しにする終わり方も、…

『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の頃のティム・バートンはかなり危ない奴だったという気もする。

このアニメ映画、ミュージカル仕立てというのも、ついて行きにくい理由のひとつだったが、お話自体もなんじゃこりゃ?だった。ディズニーアニメへのアンチテーゼという奴か?暗い話でも、怖い話でも、気色の悪いキャラクターでも、アニメに出来るという 証明…

『カリートの道』のラストは、ヒヤヒヤドキドキとは違う緊張感だった。

アル・パチーノは男気も色気もある役者だ。てっきりヤクザ稼業からすっかり足洗って、『セント・オブ・ウーマン』の退役軍人に宗旨替えしたのだと思っていたら、この映画の方が後で、頑固一徹の軍人からムショ帰りのヤクザに舞い戻っていた。しかし、こうい…

『スリーピー・ホロウ』は、首ちょん切りシーンこそが映画そのものの映画だったが・・・。

『北野座頭市』の映画評で、いくらチャンバラ映画だといっても、首をちょん切るのはちょっと時期的にマズイんじゃないかと書いたのだが、この映画でも、ちょん切りまくっていた。ほとんど首ちょん切りシーンこそが、この映画の真髄だった。ま、1999年の…

『エド・ウッド』は、感動作でも、お涙頂戴話でもないのだが、なんとなく、けなしにくい。

この映画もジョニー・デップだ。ゲップが出そうになるくらいデップにどっぷりはまったものだ。ジョニー・デップの映画は、『デッドマン』も、『ラスベガスをやっつけろ』も、『ショコラ』も、けちょんけちょんにけなしたのだが、この映画と『エドワード・シ…

『GO!GO!L.A.』は、ボケキャラふたりの勝利だ。

こういうお気楽映画は好きだなぁ。独特のバカっぽい空気感は、監督とか脚本家の手柄も多少はあるのだろうが、ヴィンセント・ギャロとジュリー・デルピーのボケキャラの勝利だ。2人ともなんともクールだった。 主人公の純朴な英国青年役のデヴィッド・テナン…

『ギャング・オブ・ニューヨーク』は、ニューヨークの暗部というか恥部をさらけ出した映画だ。

ニューヨークの暗部というか恥部をさらけ出した映画だった。といっても140~150年前の話だから、アメリカも、ヨーロッパも、まだまだ市民社会が成熟していなくて、街のチンピラも、政治家も、新聞社も、資本家も、騎兵隊も、勝手気ままに、やりたい放…

『座頭市』は、血糊べっとり、血しぶきどばっ、の殺陣だけ映画だった。

この映画、ある意味ではTV向きかも知れない。何しろぶちぶち切り刻んでも、シーンの順番を入れ替えても、大勢に影響がないような大雑把なつくりだ。スリルなし、サスペンスなし、お涙なし、濡れ場なし、ロマンスなし、葛藤なし、緊張感なし、お笑いさほど…

『ギター弾きの恋』は、もう30分長かったら、後半のエピソードもう少し丁寧に撮っていたかも知れない。

まず最初に、この映画は邦題がおかしい。『ギター弾きの恋』といったら、「セロ弾きのゴーシュ」みたいな村の純朴な青年と村娘との淡い初恋話かと勘違いするじゃないか。ところが、どっこい、 この映画の主人公は、見栄っ張りで、女好き、酒好き、賭けビリヤ…

『21グラム』は、話の筋が分からないのが、面白みのひとつだと監督が考えているのだろうか?

当時はこういう編集の仕方が流行っていたのかも知れないが、この映画でも、3つの話が平行して出て来て、しかも、話の順番も、それぞれの時間軸も、ぐちゃぐちゃにしてあるから、話を繋ぎ合わすのに難儀した。最後まで観ないとそれまでのシーンが何だったの…

『華氏911』の有名なブッシュの7分間のシーンは、確かに圧巻だった。

911の悲劇は、アメリカ人にとって正に青天の霹靂「一体、何が起こったんだ!?」状態だったろうから、アメリカ中が総愛国主義者になって、一時は国中星条旗だらけになってしまったのも仕方がない。愛国心の高揚のために、あらゆる場面で国家が歌われ、国…

『ビッグ・フィッシュ』は、『魚がホラ吹く日』とかの副題をつけた方がよかったかも。

ホラーはキライだが、こういうホラ話は好きだ。映画のタイトルが『ビッグ・フィシュ』というくらいだから、ホラ吹き親父の話にどんどん尾ヒレがついたのは仕方がないのじゃないかと思うのだが・・・。 堅物の息子は、ガキの頃からさんざん聞かされた親父のホ…