『ショコラ』は、最初はビターで、そのうちセミスイートになり、ラストは甘甘のホットチョコレートだった。

主人公のジュリエット・ビノシュは、老けた『アメリ』のようだ。顔も何となく似ているが、やることもそっくりだった。といっても、こちらはさすがに小娘じゃないから、あまりにもくだらないいたずらはしない。ちょっとしたお節介程度だ。
 
チョコレートは胸焼けするので滅多に食べないが、食べるのだったらビターの方がまだしもだ。甘ったるいのは敵わない。ところで、今年のバレンタイン・デーは土曜日だったので、義理チョコにも当たらないとあきらめていたら、今朝デスクにひとつ義理チョコがおかれていた。随分義理堅い女人がいるものだ。
 
この映画の場合、最初はかなりビターで、そのうちセミスイートになって、ラストは甘甘のホットチョコレートで終わった。でもまぁ、まずまずのかわいらしい映画だった。
 
シチュエーションはかなり突飛だ。ある夜、赤ずきんちゃん風のマントを羽織った流れ者の母娘が村にたどり着き、チョコレートの専門店をオープンする。村の位置はフランスのどこかということになっているが、南の方ではなさそうだ。だいたいこの程度の規模の村にチョコレート専門店を開いて、経営的にやっていけるとは到底思えない。せめてもう少し大きな街でやれよと忠告したくなる。しかも、どこから材料やら調理器材を仕入れるのかも定かでないし、いろんな小物を店に並べるが、そんなものを持って放浪していたのか? 
 
共同体の中に異分子が闖入してくると、必ず排斥しようとする勢力が現れるものだ。この映画の母娘の場合は、相手が女なので、多少はソフトな拒絶から始まっている。しかし、不買運動をされたら飯の食い上げになるのは火を見るよりも明らかだ。チョコは多少日持ちがするいっても、売れなかったら廃棄処分だろう。売れ残りのチョコばっかり食べていたら、鼻血ブーだもんね。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆そのうち、流れ者第2弾として、ジプシーの一団が船で流れ着く。さすがに、こちらは相当強硬なボイコットに会う。しかし、この母娘だけはジプシーに好意的で、リーダーのジョニー・デップともすぐに仲よくなる。流れ者同士が惹かれ合うのは別に構わないが、この展開はなに?
 
本来は共同体にこの母娘がどのようにして受け入れられてゆくのかがテーマのはずで、ちょっと脱線気味のように思われる?結局、色恋沙汰も入れておかないと客を呼べないということなのか。それにしても、この母親、娘をほったらかしにしてジョニー・デップと時化込んだのは、まずかったんじゃないか。
 
村長の伯爵の嫁さんの逐電の方に興味があったのだが、その辺りの事情はまったく説明がなかった。たぶん、いつも固いことを言い過ぎる、頑迷極まりない伯爵に嫌気がさして、さっさと家を出て行ってしまったのだろう。
 
ところが、このオヤジ、なぜかチョコレート屋に忍び込み、チョコを食べまくって、うっとりしながら寝込んでしまうという大失態を演じる。チョコの中にリキュールやブランデーが入っていたとしても、酔っぱらって寝てしまうほどは食えないだろ・・・。◆解除◆
 
すったもんだの末、母娘を放浪の旅へと突き動かしていた呪いというか、ある故人の遺志も風の中にちりぢりとなって一件落着だ。そのうち、パリに支店を出し、ブランド・チョコレート・ショップとして、有名店の仲間入りを果たし、東洋の島国から来た観光客のおばさんたちが行列をつくることになるのだろう。めでたし。めでたし。
 
ショコラ  Chocolat(2000)アメリカ