『ムーラン・ルージュ』は、悲恋のペーソス感がまったく感じられなかった。

こういうミュージカル映画はきれい・楽しいだけで満足しろというのかも知れないが、金が掛かっている割にストーリーがお粗末すぎた。◆◆ネタバレ注意◆◆だいたい労咳病みで、もうすぐ死ぬかという女があんなに大声て歌ったり、そこいら中を駆け回って踊ったりできるワケがないだろ。。。◆解除◆
 
もともとミュージカルは嫌いだが、なかでもこれはワースト3に入る。この映画、まったく厚みがない。軽佻浮薄な世界を描くのにストーリーに厚みなんかいらんと、監督が考えていたとしたら、もって瞑すべしだ。。。20世紀の数々のヒット曲を巧妙に劇中歌として挿入してあるのも、パクリと言えないこともない。
 
同じキャバレーものでは、ライザ・ミネリの『キャバレー』の方が100倍よかった。『シカゴ』ですら、これより数倍はいいな。キャバレーとか、踊り子とか、娼婦とかをテーマにした映画はもっといかがわしく、下品で、痛ましく、やりきれないダークサイドがしっかり描かれていないとスカみたいな話になる。表舞台が派手であればあるほど、舞台裏は濃い影に包まれるから、そこにドラマが生まれるワケだ。
 
ムーラン・ルージュといえば、パリのミュージックホールの老舗中の老舗だが、当時、そこで踊られるフレンチ・カンカンの踊り子たちは、靴は履いてたけど下半身丸裸だったとか。それで、恥ずかしさをかなぐり捨てる気合いの意味もあって、あの黄色いかけ声を発したとか、発しなかったとか。。。(うろ覚え、事実と異なる場合はご容赦) 
 
現在ではムーラン・ルージュのディナーショーの予約が、日本から、しかもWEBから出来てしまう。( http://www.moulin-rouge-japon.com/ )えらい時代やね。 ハーフボトルのシャンパン付きで23,700円から30,100円まで。(2015年4月より)もちろんオーラスはフレンチ・カンカンだ。ただし、パンツは履いているらしい。3時間45分たっぷり楽しませてくれるから、クリスマスシーズンの芸能人のぼったくりディナーショーよりは割安かも知れない。ただし、パリまで行かなければいけないのがネックだ。 
 
めぐりあう時間たち』に続いて、またまたニコール・キッドマンだ。こっちのニコールは、えらいかわいらしい。おみ足にむしゃぶりつきたくなるようなお色気というか、フェロモンぷんぷんだった。 
 
めぐりあう時間たち』のときは、わざわざ付け鼻までしてイギリス人の女流作家になりきっていたが、この映画では、パリのムーラン・ルージュの看板スターにして高級娼婦の役だから、豪華絢爛雨霰。金銀パールプレゼント状態のゴージャスな衣装に、ど派手な舞台装置。この映画の失敗の最大の原因は、絢爛豪華なショーのスペクタクルシーンをもっともっと見せなかったことだ。主役の男女だけがわあわあと大口を開けて声を張り上げるアップのカットばかりでは、悲恋のペーソス感がまったく感じられない。特に「Come What May」をふたりが歌い上げるシーンでは、つい「やかましいわい!」と画面につっこんでしまった。
 
その昔『フレンチ・カンカン』という、このムーラン・ルージュが出来るまでを描いたジャン・ルノワール監督の映画があった。あの映画の方がずっとよかったと思う。
 
ムーラン・ルージュ(2001)アメリカ Moulin Rouge