『恋愛小説家』のジャック・ニコルソンが、何にでも必ずケチをつけるのは、それなりに正しい親爺の態度だと思う。

ジャック・ニコルソンヘレン・ハントのアカデミー主演賞ダブル受賞の作品だから、観ても別に損はない。「ハーレクイン・ロマンス」か、なにかの恋愛小説を専門に書いている作家役のジャック・ニコルソンの毒舌が小気味よい。何にでも必ずケチをつけるというか、つっこみを入れるのは、それなりに正しい親爺の態度だと思うのだが・・・。 
 
◆◆ネタバレ注意◆◆人間嫌いのわがまま男が、子持ちのウエイトレスに惚れて、次第にいい人になっていくというたわいのない映画だが、こういうのでアカデミー賞が取れるんだと、妙に感心してしまった。◆解除◆
 
男優賞や女優賞は、役者個人の演技力に与えられるのだから、作品そのものの評価とは違うが、この映画で、主役のふたりがダブル受賞したのは1998年の第70回のときだ。そのときの作品賞が『炊いた肉』で、監督賞はその映画の監督のジェームズ・キャメロンだった。確かに作品的には『炊いた肉』と『恋愛小説家』では比ぶべくもないが、『炊いた肉』は特撮ばかりが目立って、悲恋ものドラマとしては凡庸の域をでていなかった。だからといって、この映画が作品賞に相応しいかといえば、?マークがつくが・・・。ま、いずれにしても、炊いた肉はあまり好きではない。肉はやっぱりステーキでしょ。
 
しかし、とにかくハリウッドが大金を投じた超大作には違いないから、ヒューマン・パニック映画として、アカデミー賞を取ったのは頷ける。しかし、主演のディカプリオとおばさん顔の女優のガキぽい恋愛ごっこに比べたら、こちらのジャック・ニコルソンヘレン・ハントの大人の恋愛ドラマの方がまだましだった。なんとなく作品・監督賞と男優・女優賞との違いが分かったような気がしないでもない。 
 
邦題の『恋愛小説家』というのも、思い切った題をつけたものだと思うが、 原題の「As good as it gets」は、「これ以上よくならない」という意味らしい。何がこれ以上よくならないのか?この親爺小説家の口の悪さか?それとも、ゴールインするまでのもろもろの条件か?
 
冷静に考えれば、このふたり、結婚してもすぐ離婚だろう。中年まで独身だった男は、嫁さんをもらってもこれまでの気ままなライフスタイルを変えることができるのだろうか?一方、女の方も、子どもの世話の他にこんな気むずかしい旦那の世話まで背負い込んだら、ストレスがたまって蒸発したくなるだろう。きっと『パリ、テキサス』のナスターシャ・キンスキーみたいになるんじゃないか?いや、『バグダッド・カフェ』のドイツ人のおばさんみたいになるのかも・・・?いずれにしても、よく分からない邦題だ。
 
恋愛小説家(1997)アメリカ As good as it gets. 
監督:ジェームズ・L・ブルックス 
出演:ジャック・ニコルソンヘレン・ハント、スキート・ウーリッチ、キューバ・グッディングJr、シャリー・ナイト