『遠い空の向こうに』は、アメリカ人の底力というか、アメリカン・ドリームの典型を見せられた気がした。

アメリカ人の底力というか、アメリカン・ドリームが実現した典型を見せられた気がした。ひと昔前の日本でも、自分の所属しているど田舎の町や村から脱出したいと思ったなら、都会の大学に合格するのが一つの手段だったが、1957年ごろの、ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」で有名なウエスト・バージニア州の、そろそろ石炭掘り尽くしのと違うかという寂れかけの炭坑町も、似たようなものだった。
 
ただ、大学に進学したいといっても、親がかつかつの経済状態では、学費が出せないから、大学から奨学金貰うしか打つ手がない。手っ取り早いのはスポーツ特待生だった。これは、日本でもよくある話だ。しかし、学業で奨学金を貰おうと思ったら、並大抵ではない。
 
この映画の主人公の少年は、大学に入学した途端に忘れてしまうような受験勉強なんかじゃなくて、自分の夢の実現のために、地道な努力を惜しまなかったところがエライ。子供の火遊びみたいなものから始まって、NASAの研究者にまで登り詰めたんだから、見上げたもんだ。(そりゃ、ロケットだから見上げるわ)
 
◆◆ネタバレ注意◆◆この少年が、ソ連スプートニク1号の成功に触発されて、自分もロケットを打ち上げたいと思ったのが、そもそもの話の発端だ。花火の火薬かなんかを管に詰めて火をつけたら爆発して、親に厳しく説教された。普通は、ここでやめてしまうのだが、この子はそうしなかった。
 
3人の仲間を集めて、本格的にロケットづくりを始めたのだが、その内、地元で評判になって、打ち上げに、沢山の見物人が来るようになった。途中で森林火災の濡れ衣着せられて逮捕されたり、親父のケガで高校中退して炭坑労働者になったりしたけれど、大空への夢は諦められない。くそ難しいサインコサインタンジェントまで独学で勉強して、森林火災の冤罪を晴らし、高校にも復学して、ロケット開発の研究成果を高校生対象の科学コンテストみたいな大会で発表したら、見事に優勝。次は全国大会だ。これは今で言ったらNHKの「ロボコン」みたいなものか・・・?
 
この少年、最後にロケットを飛ばす前に、見物人の前でスピーチをするのだが、さすがアメリカ人だ。今どきの日本の高校生では、あんなに堂々としたスピーチは、出来っこないだろう、というほどの名演説だった。◆解除◆
 
最近の理科離れ、数学嫌いの日本では、こういう子は出てこないのじゃないだろうか?小保方さん効果で、一時リケジョがクローズアップされたが、すったもんだの末、元の木阿弥の事態に立ち至って、リケジョブームも凋んでしまった。かく言う私も、 X+Y=LOVEという連立方程式あたりまではなんとかついていっていたが、三角関数微分積分になったとたん、チンプンカンプンで、頭の周りを?マークがブンブンまわって、すってんころりんと落ちこぼれてしまった。当時は理科系志望にあらずんば、人間にあらずの風潮だったから、文化系は教師から蔑まれて、人間とは見なされていない、妖怪人間ベムベラベロの気分だった。
 
そういえば、この映画にでてきた女の先生は、いいところがあった。謂わば教師の鑑。それに引き替え、わが高校時代の担任は「トンボ」という渾名だったが、ホント喰えない親爺だった。今でも町中でばったり会うたら、シバキ落として、目玉ちぎって、羽根むしって、マッチ棒みたいにしてやろかと思う。(と書いていて、「トンボ」は、中学3年の時の担任だったと思い出した。いや、これは失敬)
 
ところで、この映画の原題は、「October Sky」なんだが、何故こんなおかしな題をつけたんだろう思っていたら、アナグラムという奴で、「Rocket Boys」のアルファベットを並べ替えたものだった。なかなかしゃれたことするじゃん。『遠い空の向こうに』を並べ替えたら、「お い ら と む こ の う そ に」になった。なんのこっちゃ?
 
回文とかアナグラムとかの、いわゆるヒマジン系の言葉の手慰みとでもいうべき言葉遊びは、大好きだ。日本語のアナグラムのサイトがあったので紹介しておこう。『シロクマ君のホームページ「笑えることば遊びの事典」( http://www.sutv.zaq.ne.jp/shirokuma/)』だ。最終更新日が2000年 1月4日(火)になっていたが、まだ削除されずにあった。その中の「アナグラムの部屋」で、「アントニオ猪木」が「あん時の匂い」になるとか書いてある。他にも「なぎなた読み」とか「すむとにごる」とか、いろんな言葉遊びを紹介してあるので、ヒマ死にしそううなときは、どうぞ。
 
遠い空の向こうに October Sky (1999) アメリカ  
出演:ジェイク・ギレンホールクリス・クーパーローラ・ダーン、ウィリアム・リー・スコット