『スリーピー・ホロウ』は、首ちょん切りシーンこそが映画そのものの映画だったが・・・。

『北野座頭市』の映画評で、いくらチャンバラ映画だといっても、首をちょん切るのはちょっと時期的にマズイんじゃないかと書いたのだが、この映画でも、ちょん切りまくっていた。ほとんど首ちょん切りシーンこそが、この映画の真髄だった。ま、1999年の制作だし、首ちょん切り犯(?)も亡霊というか、首なしの騎士だったけれど・・・。
 
ティム・バートンジョニー・デップ コンビの3作目だ。今回はお話的には、たわいなかった。サスペンスとしての謎解きは、最後まで分からなかったけれど、分からないように作ってあったら、分からないのは仕方がない。ドラキュラやらフランケンシュタインなんかの怪物も出てくるが、気持ち悪いばかりじゃなくて、結構様式美のあるホラー映画、つまり、ゴシック・ホラーだった。ホラ話は好きだが、ホラーは苦手なので、この方面はあまり明るないのだが・・・。
 
といっても、ホラー映画で明るいのは観たことがない。この映画でも、暗めの画面ばかりだった。暗がりでドッキリというのは、たいていは朝になったら、何をビビッていたのか?の類だろう・・・。おどろおどろしい闇があるから怖いの、で、お化けも怪物くんも、明るい日差しの元では、怖いことも、恐ろしいことも、何もない。現実の事件の方がずっと怖い。底なし沼並みのの恐怖だったりする。 それにしても、CGを使いまくりだった。この手のファンタジー映画系の監督にとっては、CGは伝家の宝刀みたいなもので、CGを使わないことには作品自体が成立しないだろうから、いくら使ってもかまわない。映像的には、凝りこりで、潤沢な制作費を使いまくったという感じだ。史上最低の監督だ言われていた、あのエド・ウッドとはえらい違いだ。
 
CGだけじゃなくて、特殊メイクというのか、リアルな生首やら、西の森のセット(屋内に森を再現してあるらしい)やら、ぼろ風車や村のメインストリートのオープンセットやら、映像的リアリティ再現努力は見事としか言いようがない。ただし、なにしろ全体にアンダーな映像だから、細かいところはほとんどつぶれていて、よく見えなかった。
 
ボロ風車の中で、首なし騎士が階上へ逃げるジョニー・デップを追いかけて行くシーンで、はしごを叩き壊しながら迫って来るのだが、自分が登るはしごを先に壊してしまったら、どうして登る気だと、素朴に疑問を持った。
 
それと、馬車チェイスいうのか、馬車と馬に乗った首なし騎士との追っかけも、不死身の首なし騎士だったら、そもそも必死で馬車にしがみついたりしないだろ・・・。ま、他にもつっこみ出したら、きりないからやめておこう。
 
こういうホラー映画は、季節的に秋の終わりから冬でないと、雰囲気が出ない。これが夏場の話だったら、あんな鎧をつけていたら汗だくになるだろうし、アロハで短パンの首なし騎士なんかが出て来た日には、怖がりながら笑ってしまいそうだ。
 
それから、相手役の女優は、雰囲気が安達裕実に似ていた。あとで調べたら、『アダムスファミリー』の子役だった娘で、あの『バッファロー’66』にも出ていたクリスティーナ・リッチだった。
 
首なし騎士役のクリストファー・ウォーケンは、『バスキア』にも出ていた名脇役だが、代表作は26年も前の『ディアハンター』だ。しかし、首なしの役だから、最初と最後しか、顔は出てこなかった。何となくあんなに熱演していたのに、気の毒な感じがしないでもない。しかし、アクションシーンは、スタントマンがやっていたのだろう。
 
ティム・バートンは、ディズニーのアニメーター出身なだけあって、根っからファンタジーが好きなんだろう。お次は『マーズアタック』にしようか?『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』にしようか?
 
スリーピー・ホロウ Sleepy Hollow(1999) アメリカ