『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の頃のティム・バートンはかなり危ない奴だったという気もする。

このアニメ映画、ミュージカル仕立てというのも、ついて行きにくい理由のひとつだったが、お話自体もなんじゃこりゃ?だった。ディズニーアニメへのアンチテーゼという奴か?暗い話でも、怖い話でも、気色の悪いキャラクターでも、アニメに出来るという
証明か?日本ではとっくの昔に『ゲゲゲの鬼太郎』があったから、アニメに出来るのは自明の理ではあるが・・・。
 
ティム・バートンは、この映画の製作と原作とキャラクターの設定を受け持っていたらしい。確かに、よっぽどプロデューサーが資金集めがうまくないと、こんな子供向けではない、金も時間もかかるアニメ映画は作れないだろう。監督をしていないというだけで、ほとんどティム・バートンのための映画だった。ストップモーション・アニメーションというらしいが、人形を少しずつ動かしながら、一齣ずつ撮影してゆくのだから、そりゃあ、辛気くさい話だ。
 
76分の映画を作るのに3年かかっているのだから、いくらアメリカ人は残業をしないといっても、気が遠くなるくらいの長丁場だっただろう。ただ、1993年の公開だから、ざっと20年前だ。10年一昔どころか、CGアニメ全盛の現在から見たら、このストップモーション・アニメというものも、完全に前世紀の遺物か。
 
ま、それは措いておいて、メイキングの方がずっと興味深かった。主人公のガイコツ男の頭部だけで、何10種類もつくってあるとか、瞬きは3種類の目玉(というか、ガイコツだから眼窩の骨のくぼみ)をとっかえて表現しているとか、物凄いこだわりぶりだった。出てくるスタッフもオタッキーな面々ばかりだった。最近のPIXARのCGアーティストなんかも、きっとオタッキーなんだろうが、この時代のアニメ制作者は筋金入りだ。
 
バーチャルの世界では、手に直接触れる実体がないけれど、ストップモーション・アニメーションでは、人形やら背景のセットやら、1個ずつ手作りしなくてはならない。完全にハンドメイドのクラフトマンシップの世界だ。アーティストとしてのセンスもノウハウも必要だが、職人的に手先の器用さが不可欠だ。
 
こういうブラックユーモア系のアニメ映画ファンとかマニアだという人も、きっとオタッキーなんだろうが、もしアニメ業界とか、ゲーム業界とかで、仕事できてなかったら、ちょっと悲しいな。どう考えても、ティム・バートンも、この映画のキャラクターがディズニー・キャラクターのように、世界中で愛されるとは思ってないだろう。この前の首斬りまくりの『スリーピー・ホロウ』といい、この映画といい、ティム・バートンが才能豊かだというのは分かるが、この頃のティム・バートンは、かなり危ない奴だという気もする。
 
このアニメで描いているような奇怪な世界が好きだという人がいたら、あまりつき合いたくないタイプだ。ところで、「オタッキー判別テスト http://www.geocities.co.jp/Berkeley/5526/otaku.html 」いうのがあったんで、やってみた。ありゃりゃ、そんな風に思ってなかったのだが、「おたく度90%」と判定されてしまった。
 
ハロウィンもクリスマスもキリスト教の行事だが、最近のアメリカでは、宗教離れの影響か「Merry Christmas」じゃなくて、「Happy Holidays」というようになったという記事がでていた。日本人のクリスマスの大騒ぎも、大概にしておいた方がいいんじゃないの・・・。
 
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス THE NIGHTMARE BEFORE CHRISTMAS(1993) アメリカ