読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『ライトスタッフ』は、『プロジェクトX』風に仕立て直した方がいいんじゃないか。

アメリカが旧ソ連と宇宙飛行競争にしのぎを削っていた頃の宇宙飛行士の話だ。内幕ものと言えないこともない。旧ソ連や中国では絶対に作れないタイプの映画だね。如何にも個人主義の国、アメリカならではだ。
 
前半は音速の壁への挑戦話だ。マッハ1は時速にすると1225km、この壁を突破するのも結構大変だったみたいだが、突破したら、次はマッハ2.3あたりに空の怪物がおる言われていた。その壁も破られ、今や無人の実験機が音速の7倍(7700km)の速度をマークしているらしいが、そんなに急いでどこ行くの?
 
そういえば、アイルトン・セナは「音速の貴公子」と言われていたな。1994年5月1日に、イモラサーキットで事故死したのだった。もう20年以上も前になるのか・・・。享年34。まさに夭折という奴だ。合掌。セナは絶頂期にホンダエンジンの車に乗ってドライバーズチャンピオンに3回もなったことや日本人好みの甘いマスクと相まって、日本人女子のアイドルだった。嫌韓意識が今ほどでない頃に、4様はおばちゃんのアイドルだったが、セナ様にきゃあきゃあ言ってたのは、30歳くらいまでの女子だろう。中には、おばさんもいたかも知れないが・・・。まさに日本のF1人気=セナ人気だった。モナコ・グランプリでやたら強かったこととか、宿敵プロストとの数々のバトルも忘れられない。しかし、いくらF1カーが早いと言っても、時速1225kmは出せないだろう。
 
映画の話に戻ると、音速の壁に挑戦するテストパイロットの話は、途中で立ち消えになって、話はいつのまにか1958年から始まったマーキュリー計画のための、宇宙飛行士候補生選抜試験にすり替わっていた。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆ それにしても、この映画、宇宙飛行士なんかサルみたいなもんだといって、なろうとしなかったテストパイロットを出してきたのはどういう理由だろう?しかも、この親爺(サム・シェパードがやっていた)は、最後に、旧ソ連の持っていた高度記録を破ってやると言って、無茶な飛び方をして一機(多分数10億円ではきかないだろう)をお釈迦にしてしまった。なんだか、この親爺を時代に逆らったヒーローみたいな描き方をしていたけれど、「なんでやねん?」と思った。これはこれ、あれはあれで、両者の対比に必然性が感じられない。7人の宇宙飛行士の生き方の、アンチテーゼとして出してきてる風でもなかったから、別に出さなくてもよかったんじゃないか。サム・シェパードはカッコよかったけれど・・・。 ◆解除◆
 
それより、宇宙飛行士同士の葛藤とか、ジョンソン副大統領に代表されるワシントンのお偉方の思惑とのつっぱり合いとか、科学者たちとの意識のズレなんかの方をもっと前面に出して欲しかった。しかし、あれは壮大な国家プロジェクトなんだから、あまり茶化したりはできないな。ともかく、第1次の7人の宇宙飛行士のことをライトスタッフ(素質ある者達)と呼んだらしいが、この7人、どいつも一筋縄ではいかん曲者だった。それぞれの出身母体である陸海空軍の精鋭パイロットなんだから、プライドも高い。このときの厳しい選抜試験が、『ガタカ』の元ネタになっているのかしら?
 
アメリカも日本と同じで、ニュースのワイドショー化が甚だしいので、宇宙飛行士は、正に国民的ヒーローに祭り上げられていたが、みんな女房持ちだから、嫁さん連中も姦しい。しかし、2回目に飛んだグリソム夫妻は気の毒だった。着水後にカプセルのハッチが勝手に開いて(と主張していたが、無意識に脱出用レバーを引っ張ったんじゃないか)沈没してしまったから、ケネディ大統領からのねぎらいの言葉もジャクリーンとの懇談もなしだった。その次の、グレン中佐の軌道飛行成功のときのニューヨーク大パレードとは、月とすっぽんほどの違いだ。
 
この頃は、宇宙飛行競争で、旧ソ連の方がちょっとリードしていた。スプートニク2号ライカ犬に始まって、「地球は青かった」のガガーリン、地球周回飛行一番乗りのチトフ、「ヤーチャイカ=私はカモメ」のテレシコワと、ソ連一歩リード状態が続いていた。次のジェミニ計画で、アメリカも巻き返しを図るのだが、ジェミニ計画では、宇宙船も二人乗りになって、宇宙船同士の軌道上でのランデブーとドッキング(この言葉、子供心にも、いやらしい感じがしたのも事実だ)に成功すると、お次は、船外活動だ。宇宙服を着て宇宙船の外に出ていく姿が映っているテレビの画面を息を詰めて眺めていたものだ。
 
ま、どちらにしても、3時間は長すぎる。再現ドラマ仕立てのドキュメンタリーみたいなものだったので、いっそのことNHKの『プロジェクトX』風に仕立て直して、『第1部 男たちはどうやって音速の壁を超えたか?』、『第2部 アストロノーツへの試練の道-サルになんか負けられるか-』、『第3部 宇宙からの帰還 その栄光と悲惨』の3部構成くらいでリメイクした方がいい。中島みゆきの歌もピッタリはまるような気がする。
 
ライトスタッフ The Right Stuff (1983) アメリカ