『キス・オブ・ザ・ドラゴン』は、『ニキータ』より強く、『レオン』より切ない、というフレコミだったが・・・。

ニキータ』より強く、『レオン』より切ない、というフレコミだったが、それほどでもなかった。ジェット・リーという役者はかなり地味なんだが、カンフーのキレは抜群だ。こういうタイプは、教室ではあんまり目立たないのに、柔道の校内大会のときだけは、小さい体ででっかい奴をぼんぼんぶん投げて、強すぎて目立ちまくという感じだ。しかし、女子にはそんなにもてない。なんとなく暗い感じが不評なんだろう。自慢じゃないが、若かりし頃は女子にもてなかったが、別に暗かったワケではない、ただ単にシャイなせいと女好きのしにくい容貌だっただけだ。いまだに「渡世人には女はいらねぇ」の毎日ではあるが・・・。
 
何の話だっけ?しかし、何故フランスの話なのに、英語を蕊っているのかという不自然さがついてまわった。ま、ジェット・リーが中国語と英語しか喋れないというのが裏事情だったとしても、フランス警察の刑事やら、街のチンピラまでが、流暢な英語を喋りまくるというのは、どんなものか?『ラストサムライ』で、当時の侍が英語ぺらぺらだというのと同じだ。
 
相手役のブリジット・フォンダは、アメリカ生まれの田舎者という設定だったから、この二人の間では、英語で意志が通じるというのはいいとして、ここは、『ターミナル』のトム・ハンクスみたいに、リーさんにまず言葉の障壁を乗り越える努力をしてもらわなければいけないんじゃなかろうか?そういう視点がまったく入っていないのが物足りないと感じたのは、果たして私一人だろうか?
 
あの悪の権化みたいな警察官は、もっとフラン人ならではの底意地の悪~い悪知恵を働かさないとイカン。部下を怒鳴り散らしているばかりで、一向に悪賢こそうに見えなかった。あの親爺、陸亀を引き出しで飼っていたが、あの亀ももう少し小道具として絡ませなきゃ、何故ここで亀なんだ?の疑問が脳裏に浮かんでしまった。
 
こういう映画は、あまりややこしいことを言わずに、アクションシーンだけを鑑賞していたら、いいのかもしれないが、そもそも、何故中国から来た警官があの中国人の麻薬のボスを殺したことにしたかったんだ?フランス警察が、女殺し屋を使って殺したことがバレたら、両国の友好関係にヒビが入るのか?中国の麻薬王が、フランスになんの用があったのだ?あの警察官の親爺の部下というか手下たちは、警官なのか?それともヤクザなのか?あの警察の空手道場のシーンで、空手の黒帯が、それにしても多勢出てきたけれど、たった一人にやられるようでは、有段者じゃないだろ。しかも、やられてすぐに起きあがって来るな。
 
この映画はパリが舞台だから、一応観光名所も出てくる。特にセーヌ川のバトォムーシュの中でのアクションシーンは、物珍しさも手伝って、おもしろい見せ物だった。ただ、この映画の直後に観た、ゴダールの『はなればなれに』では、なんとルーブルの中を男女3人が走りまわっていた。しかし、まあ、ルーブルの中で、アクションシーンを撮っていて、ミロのビーナスを引き倒したり、跳び蹴りでモナリザの額をぶち抜いたり(モナリザは防弾ガラスで仕切られているけど)したら、それこそ、国際問題だ。
 
この映画では、ワイヤーアクションは使っていなかったが、エッフェッル塔や凱旋門で、ワイヤーアクションをやってくれたら、よかったような気もする。パリのチャイナタウンというのは聞いたことがないのだが、あるのか?パリの場末にあるという設定の中華料理用エビせんの専門店というのも、ビックリ仰天だ。そんな店、絶対にないだろ。 
 
◆◆ネタバレ注意◆◆「キス・オブ・ザ・ドラゴン」というタイトルだけを見たら、誰でもブルース・リーの『燃えよドラゴン』を連想するんじゃないか。「キス・オブ・ザ・ドラゴン」は、「龍の口づけ」だ。龍はやたらでかい(?)し、口が臭そうだから、口づけどころか、ひと呑みにされてしまいそうだ。これは、相当恐い武術の名前みたいだ。ところが、どっこい「キス・オブ・ザ・ドラゴン」は鍼治療の名前だというのには笑えたけれど、あのシーンは、必殺仕掛人藤枝梅安のパクリみたいだ。同じ必殺の鍼治療をやるのだったら、『マスク』みたいにCGを使いまくって、目玉が3mくらい飛び出すとか、頭が爆発するとか、目や耳から滝の如く血が噴き出すとかして欲しかった。最大の見せ場なんだが『レオン』の爆発シーンみたいな意外性とか、スカッとするカタルシスがなかった。◆解除◆
 
ブリジット・フォンダが、ピーター・フォンダの娘で、ジェーンフォンダの姪で、ヘンリーフォンダの孫だというのは分かっていたが、この女優の出演作を観たのは、これが初めてだった。化粧を落とすと、結構普通の人っぽかった。
 
キス・オブ・ザ・ドラゴン kiss of the Dragon (2001) アメリカ  
監督:クリス・ナオン 
出演:主演:ジェット・リーブリジット・フォンダ、チェッキー・カリョ