「ノーカントリー」はノーコン映画だった。

2007年度の第80回アカデミー賞のアの作品賞他を受賞した映画だというので観たのだが、結論から言うと、観ない方がよかったかも?
 
何しろ、追跡劇なんだが、追っかける方が、神出鬼没過ぎる。あんなにうまく失踪者が見つかるとは到底思えない。しかも、この映画は、1980年代の時代設定だから、今から30年も前の話だ。まだまだ、IT技術も今みたいに進んでいない。グーグルマップストリートビューもなかった頃だ。それと、麻薬マフィアから大金を盗んだ男が、のこのこと現場に戻ってくるとも思えない。それに、大体保安官補に殺人鬼のシガーがおとなしく捕まって、パトカーで護送されているとこからしておかしい。こんな凶悪無比の男だったら、捕まる前に、保安官補を殺して、さっさと逃げているに違いない。
 
しかも、見るからに気色悪い男を一人だけベンチに座らせて、しかも前手錠で(アメリカは後ろ手錠が一般的なんじゃなかったか?)背中を向けて電話している図なんて、あり得ないぜ!セニュール。
 
このあり得な状況設定のオンパレからして、この映画のとんでもなさが分かるというものだ。得体の知れないもの、正体不明なもの、こういう理解しがたいものに直面すると、人間は目をそらそうとするみたいや。何度か目をそらしてしまった。
 
この殺人鬼シガーに比べたら、ハンニバル・レクターの方が理解できそうだ。大体、このコーエン兄弟という監督は、「ファーゴ」でも、あきれかえったんだが、この映画でも、何を観客に伝えたいのかよく分からない。世の中には、理解出来ない変な奴がいるから気をつけろと言うのか、それとも、死に神のような殺人マシンに追いかけられた日には、諦めざるを得ないというのか?
 
これでもかというくらい殺人のシーンを見せつけて、何がおもろい?大体あんなおかしなエアガンを持ってうろうろしていたら、それだけで職質されるだろ。身内の警察官(いや保安官補だった)が署内で殺られたのだったら、もう少し本格的な捜査体勢で望むだろ。こういう世間常識を無視したストーリー展開というのが、どうにも納得がいかなかった。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆シガー殺しを命じられたもう一人の殺し屋が、金の入ったバッグを簡単に見つけるのも、あり得ないぜ。セニュニータ。こいつもあっさり殺されてしまったけれど。◆解◆大体、シガー役の役者が、あの日本を代表する建築家のA藤T夫さんに似てた(髪型とか目とか)んで、イメージ払拭するのに苦労した。
 
日本では変な宇宙人役で、缶コーヒーのTVコマーシャルに出てるトミー・リー・ジョーンズがやっていた田舎の保安官も、一人でうろちょろしているばかりで、どう考えても、犯人を捕まえられるとは思えなかった。
 
ところで、あんな大怪我をして走ったりできないだろうと。「ラスベガスをやっつけろ」みたいなナンセンス映画として観る分には、多少のご都合主義に目をつぶってもいいが、ここまでノーコン映画だと、つきあい切れない。監督がもっともらしい映画を作っている気になってるみたいなのが、はなはだ気に入らない今日この頃だ。
 
ノーカントリー No Country for Old Men (2007)アメリカ