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『グラン・トリノ』は、男のけじめのつけ方を教わった気分だ。

この映画の制作当時、アメリカの中でも経済的に最も疲弊していた中西部デトロイト近郊の町が舞台だ。この辺りは自動車工業のメッカだったのだが、GM、フォード、クライスラーのビッグ3のクルマが売れなくなって、工場が次々に閉鎖され、白人がいなくなってしまった住宅街に、後から入り込んできたのがアジア系の亡命者たちだったという設定だ。
 
モン族というのは、ベトナム戦争の頃に、米軍に協力したので、戦争が終わった後に、ベトナム政府から迫害を受け、アメリカに亡命してきたらしい。フォードの元工員だった朝鮮戦争帰還兵の爺さんは、奥さんを亡くしたばっかりなんだが、その爺さんと隣家に引っ越してきたモン族の青年とその姉との交流を描いているのだが、爺さんにも、亡命してきたモン族にも、それなりの事情がてんこ盛りなので、観ている方もかなり重苦しい気分になってくる。 
 
アメリカの人種差別も、まだまだあるようだ。南部は特にひどいらしいが、中西部も決して人種差別がないわけではない。ま、ニューヨークは別格のようだ。世界中からあらゆる人種が集まっている人種のるつぼだから、いちいち人種差別をやっていたら生活ができないからだろう。
 
それにしても、クリント・イーストウッドは、この映画でも、ダーティー・ハリーばりの強面親爺だった。その強面ぶりが、ラストの伏線だったのだが・・・。 ま、男のけじめのつけ方を教わった気分だ。
 
ガソリンをばらまきながら走るアメ車は、過去の遺物と言ってもいいのだろうが、速い、でかい、クルマが威張っていた時代から、そこそこ速いし、燃費も凄いエコカー全盛の時代になって、アメ車は出る幕がなくなってしまっていた。さすがのアメリカ人も、昔風の恐竜クルマには見向きもしないようになった。
 
しかし、アメリカといえば、マーケティング理論の本場なんだから、もっと早く、世間の人が乗りたがるクルマ像をキャッチして、さっさと開発していてもよかったはずなんだが、アメリカ国内で生産できなくても、アメリカ資本で海外に工場作って、逆輸入するなりできたと思うのに、なんでそうはならなかったんだろう? 
 
グラン・トリノというクルマは、乗ったことも、見たこともなかったが、同じフォードのマーキュリー・クーガーというクルマには、10代のガキの頃に、よく乗せてもらっていた。我が家が金持ちだったのではなくて、ダチが金持ちのドラ息子で、そいつの運転で、遊び回っていたんだ。ほんまもののバカ造だった。そのクルマはどでかい図体なんだが、2ドアで、後部座席はめちゃめちゃ狭かった。当時はまだ珍しかったオートマ・パワステ・パワーウインドウ・エアコン・8トラのカーステレオと豪華絢爛のフル・スペックだった。10代の頃のほろ苦い思い出でしかないけれど・・・。
 
グラン・トリノ Gran Torino (2008) アメリカ
出演:クリント・イーストウッド  ビー・ヴァン アーニー・ハー 
    クリストファー・カーリー ブライアン・ヘイリー