『風の谷のナウシカ』は、固いことを言わずに、ニコニコしているのが、大人の鑑賞法のようだ。

宮崎アニメの最高傑作は、この『風の谷のナウシカ』か、それとも『天空の城ラピュタ』か、意見が分かれるところだろうが、こちらの方が好きかな。20年前の作品とは思えない。『千と千尋の神隠し』より100倍いい。ストーリーに奥行きがあり、強いメッセージ性があるだけでなく、ナウシカというけなげで、賢く、力強い少女のキャラクターを生みだしたことが最大の功績だ。このアニメの後、日本の女子は力強くなりすぎたきらいはあるが、残念ながら、けなげでもカシコくもならなかった。
 
虫愛ずる姫君でもあるナウシカは、生きとし生けるものすべてに愛情を注ぐ聖母マリアの少女期のような女の子だ。しかも、運動能力もとびっきり高い。王女であることの責任感(ノブレス・オブリージュ)も人一倍強い。ナウシカは明らかに巫女であって、王蟲(オーム)をなだめる呪術くらいは、お茶の子サイサイで使える。
 
しかし、このアニメのバックボーンになっているのは、キリスト教的博愛主義でもなく、仏教的輪廻転生思想でもない。自然崇拝アニミズムのようなものか。自然に対して特別な崇拝の意識を持つ日本人の、原始的な宗教観に裏付けされているようにも思えるが、絵柄はまったく非日本的で、地球上のどこでもないどこかの話になっている。 
 
最終戦争後の世界を描いたSF映画やアニメはよくあるが、21世紀になってみると、世界の終末はこういう形で訪れるのではなく、地球規模の環境の激変によって訪れそうだ。科学文明が一旦失われたら、再度現在のレベルまで到達する可能性があるのか、ないのか、門外漢だからよく知らないが、いずれにしろ最終戦争で御破算になるのではなく、地球温暖化による農作物の不作が、人類滅亡の直接的な引き金になるだろう。
 
環境ホルモンの影響による不妊エイズ、SARS、BSE、鳥インフルエンザエボラ出血熱などの感染症による人口激減が起こらない限り、いずれ食べるものがなくなる、と信じて疑わない。
 
話は変わるが、私はニオイに敏感すぎるところがあって、街の中でも、電車の中でも、少しでも不快臭や異臭がするとすぐに気がつく。ニオイセンサー並みの感度だ。夕方によく乗るJR東西線の電車の中で、北新地(大阪のことをあまり知らない人のために説明しておくと、大阪にはミナミとキタに大きな歓楽街があって、より大阪的なのはミナミの方だが、バーやクラブが狭い範囲に集中しているのはキタの北新地だ)の職場に向かうホステスのおねぇさん方の香水のニオイにいつもクラクラしてる。 
 
◆◆ネタバレ注意◆◆で、何を言いたいかというと、腐海とは何とも鼻がもげそうな腐臭ふんぷんのネーミングだ。うまいネーミングだとは思うが、苦界があるくらいだから、漢字を当てるなら腐界だと思とっていたら腐海だった。その腐海の底で、ナウシカが流砂に巻き込まれて、あれ?どうなるのかと思っていたら、腐海の底のそのまた底に清浄な空気と水と砂があったというのは、ちょっと?だな。。。◆解除◆ 
 
それと、王蟲(オーム)というのは、芋虫のでっかい奴だと思ったが、あれがもし虫の一種なんだったら何かの幼虫と違うのか?芋虫が脱皮するというのもおかしい。脱皮するのは、蛹から成虫に変わるときだろ。それに、芋虫の子供がおるというのはもっとおかしい。と言っても、アニメにつっこみ入れるのは大人げない。ここは固いことを言わずにニコニコしてるいのが、大人の鑑賞法だと思ってたのだが、王蟲ダンゴムシなんだということを教えてもらった。なんでも知っている博学な人というのがいるものだ。
 
ダンゴムシは成虫になるまで何度も脱皮するらしい。しかも、成虫になっても脱皮してどんどん大きくなるらしい。最後に行き着くのが、王蟲というワケね。WEBで調べたら、日本ダンゴムシ協会 のサイトがあった。ダンゴムシとべんじょむしは違う虫で、べんじょむしは丸まらないとか書いてある。またひとつ賢くなった。ホント、インターネットはトリビアの泉だね。
 
この「風の谷のナウシカ」は、我が家の愚息が子どもの頃、ビデオを際限なく繰り返し見続けていたアニメで、その息子は、長じてめでたく折り紙付きのエコロジストに成長した。それにしても、ナウシカの声をやってる島本須美さんは、なんともチャーミングなお声だ。どうでもいいついでに言うと、ナウシカのスカートは短すぎるのじゃないかと思う。
 
風の谷のナウシカ(1984)日本  
監督:宮崎 駿