『ストレイト・ストーリー』は、爺さんの心意気にカンドーした。 

この映画は、73歳のアルヴィンじいさんの虚仮の一念と言ったら失礼だが、誰もが無謀と思う大冒険に出かける心意気にカンドーしてしまった。一寸の虫にも五分の魂、二寸のひこばえにも末は大木の心意気だ
 
アバウト・シュミット」のジャック・ニコルソンは、キャンピングカーで出かけていたが、この爺さんは、おんぼろの芝刈り用トラクターにトレーラーをつけて、500キロの長旅に出発したのだが、そもそも芝刈り用のトラクターで公道を走ってもいいのだろうか?しかも、トレーラーまで牽引して・・・。しかし、そういう初歩的な疑問は措いておいて、ここは前進あるのみだ。
 
この映画、ワルが一人も出てこない。人間の懐の深さがよく出ていた。自転車レースの一団が通り過ぎていったけれど、どうみても草レースっぽかった。リカンベントも結構走っていた。アメリカは、自転車乗りにとってはいい国らしい。
 
日本は数は多いけれど、ほとんどがママチャリだが、自転車乗り人口が最近急増している。しかるに、スポーツとして自転車で走れる道が少ない。以前自転車で転んだのは、淀川右岸の河川敷なんだが、そこらじゅうに、原付やバイク乗りの連中が入り込んで来ないように輪止めが設置してある。
 
その上、道路に人工的に蒲鉾状の凸部まで作ってあった。その凸部で転んだのだ。そこそこスピードが出ていたので、左膝、左手、左肘、左肩、左頬に打撲傷を負った。大怪我だ。自転車用ヘルメットにヒビまで入った、大損だ。責任者!出てこい!!
 
自転車だけに、話が横道にそれてしまった。爺さんは前進あるのみだ。リチャード・ファーンズワースは、かっこいい爺さん役者だった。爺さん役者の日本代表は笠智衆だろうが、どっちか言えば、リチャード・ファーンズワース系の爺さんになりたいな。笠智衆ではちょっと枯れすぎだ。とは言うものの、自転車で日本一周しようとは思わない。
 
ロードムービーは、東海道中膝栗毛と一緒で、次々おもしろい場面が出てきて、ハプニングに次ぐハプニンングの連続でないとダメなんだが、この映画でも、一見淡々としたストーリーと思わせておきながら、いろんなエピソードを塩梅よく挿入してあった。一番感動したのは、◆◆ネタバレ注意◆◆10年ぶりに再会した兄貴と抱き合わなかったことだ。このデビッド・リンチの演出は、実に日本的だった。それと、実にケータイもスマホもない時代の映画だった。◆解除◆
 
ストレイト・ストーリー The Straight Story (1999) アメリカ・フランス
監督:デヴィッド・リンチ 脚本:ジョン・ローチ メアリー・スウィーニー
出演:リチャード・ファーンズワース シシー・スペイセク 
         ハリー・ディーン・スタントン  ジェームズ・カダー 
         ウィリー・ハーカー エヴェレット・マッギル