『紅いコーリャン』は、まんま中国版「赤いシリーズ」だった。

主役のコン・リーは、中国の百恵ちゃんと言われていたくらいだから、ホントによく似ていた。この映画は、赤がテーマカラーだから、まんま中国版「赤いシリーズ」だな。それにしても、監督のチャン・イーモーは、こういう中国の大地に根ざした映画の方がいい。ワイヤーアクションものは、宙に浮いている分、華麗だけど浮ついている。 (エラそうに!)
 
第2次世界大戦前後の中国を舞台にした映画は、どうしても日本軍の蛮行が描かれる場合が多いが、この映画でも、あの隊長は無茶苦茶な命令を出した。いくら何でも、これはフィクションで、史実に基づいているワケではないだろうと思うのだが、日本人の端くれとして、何となく居心地が悪かった。
 
それにつけても、中国では、反日教育をかなりしつこくやってきているみたいだが、大体えげつない仕打ちをした方はあっさり忘れても、ヤラレた方はいつまでも忘れないものだ。ただ、東京大空襲を指揮した米軍の司令官だった親爺に、戦後自衛隊に貢献してくれたからといって、勲章までやってしまう日本の政治家は、忘れっぽい奴が多いみたいだ。
 
映画の話に戻ろう。チャン・イーモウは、テーマカラーを決めるのが好きみたいだ。ま、色にこだわる気持ちは分からなくもないが、『ヒーロー』ではやりすぎの感があった。この映画の場合、背景になっている中国の景色が、どちらかというと黄土色ぽいので、紅い色がよく合っていた。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆日本軍が村人を駆り出して、コーリャン畑を踏み倒させていたのだが、何故あんなことをしてたのかと思って、ネットで調べたら、こういうことだった。長崎大学教育学部のサイトに、こんな記事があった(今はもうない)。 
 
「(前略)中国農民にとって、『コウリャン』という背の高い穀物は、当時何にでも使えたので、農民達は綿花を作るかたわら、コウリャンの育成に力を注いでいた。しかし、八路軍と日本軍の抗争が激しくなると、コウリャンは八路軍が隠れるのに絶好であったので、日本軍はこのコウリャンを刈りとってしまった。必需品であるコウリャンを刈りとられた中国農民もやはり、日本軍に対して反感を持つようになり、(中略)反発を受けた日本軍は強行手段に出ることになる。夜の間に村を包囲して、夜明けとともに大砲を撃ったり、手榴弾を投げたりして村を壊滅させてから、村の綿花を奪いに村へ入った。八路軍が村人の中に混じって反抗してきたけれども、日本兵は1人120発の弾を持っているのに対して、八路軍は1人8発しか持っていなかったので、相手にならなかった。逃げ惑う村人を見かけては八路軍だといって殺し、女性を見かけては強姦していた。(後略) 」って、かなりバイアスの掛かった話かも知れない・・・。
 
ただ、映画ではこの辺りの事情をあまり説明していなかったので、やや唐突な感があった。それにしても、日本人や日本軍が出てくる外国映画は、第3者的に気楽に観てられない。外国映画に出てくる日本人は、我々が観たらどこかおかしい。日本映画で外国人が出てるのも、その国の人が見たら、やはりおかしいのだろうか? 
 
それと、紅いコーリャン酒って、できるものだろうか?どうみても、あの酒は蒸留酒だった(火がついていた)が、蒸留酒というは、できたては無色透明だろう。それにしても、コン・リーが丼鉢一杯飲み干していたが、あんな大胆なことしたら、どエライことになるのじゃないか?しかも、あの小さな子供まで飲んでいた。それから、篭かきだったはずの男が、悪ふざけで、できたての酒に小便を引っかけたりしたら袋叩きになるだろう。そいつが親方にすり替わったといういきさつも、いまいち納得できない。 ◆解除◆
 
この映画の邦題『紅いコーリャン』も、いささか変だ。原題の『紅高梁』いうのは紅芋(ベニイモ)とか赤蕪(アカカブ)などと同じで、種名ではないのか?コミュニズムに染まったコリアンと勘違いしてしまった。
 
紅いコーリャン 紅高梁 RED SORGHUM (1987) 中国  
出演:コン・リーチアン・ウェン、トン・ルーチュン、リウ・チー