『英国王のスピーチ』は、どこといって、つっこむところがなかった。と言って、名作というほどでもない。

イギリス王室は、なんだかんだとスキャンダルまみれの感じがしていたが、最近はウイリアムズ王子とキャサリン妃の結婚やら、王子、王女の誕生やらで、少し持ち直してきた感がある。
 
しかし、この映画の主人公のジョージ6世の兄貴のエドワードが離婚歴のあるアメリカ人のシンプソン夫人を取って、国王の座を降りてししまったあたりが、すったもんだの端緒じゃないか?
 
この映画では、シンプソン夫人はちょっといけずな女の人に描かれていたけれど、ま、成り行き上仕方がない。実話に基づいている映画なので、あまりめちゃくちゃな演出はされてないみたいだ。で、どこといって、つっこむところもあまりなかったが、名作というほどでもない。
 
ま、この王さんも子どもの時から左利きを直されたり、X脚を直されたりと、めちゃめちゃストレスを受けた末に、努力して吃音症を克服したんだなと感心したし、王妃のエリザベスもうまいこといい先生を見つけたもんだと思った。言語聴覚士の先生も、相手が王族だからといって、自分のスタイルを曲げないところがカッコよろしい。
 
それにしても、王族がお忍びで街中に出掛けていったりできたのだろうか?ま、国王になる前だったし、王族の一員といっても、皇太子でもなかったから、結構自由だったのかも知れない。ま、今ほどパパラッチもいなかったのだろう。
 
イギリスは階級社会だから、庶民階級にとっては、貴族階級は羨望の的であると同時に、嘲りや妬みの対象でもあるので、王さまもつらいよという雰囲気がよく分かった。それにしても、あの「開戦のスピーチ」は圧巻だった。あのスピーチを聞かされたら、イギリス人は、こぞって参戦を支持しただろう。
 
そもそも、イギリス人の英語は、アメリカ人のように巻き舌の早口ではないから、ヒヤリングしやすいのだが、さすがにここまでゆっくり喋ってくれる人はあまりいないだろう。それでも、DVDの特典に入っていた「終戦のスピーチ」の方は、かなり流暢になっていた(って、偉そうに)。
 
ところで、その「終戦のスピーチ」の中で、ナチスドイツには勝ったけれど、「まだ日本という粘り強く無慈悲な敵との戦いが残っている」と言っていたのを聞いて、ちょっと複雑な気持ちになってしまった。
 
英国王のスピーチ The King's Speech (2010) イギリス
出演: コリン・ファース ヘレナ・ボナム=カーター ジェフリー・ラッシュ