『バンディッツ』は、つっこみだしたら切がないが、監督もそんなことは百も承知分で撮ってたのだろう。

犯罪映画とはいうものの、人は殺さないし、激しい格闘シーンもないし、裏切りも、密告も、なにもない。想定外のハプニングといえば、交通事故くらいだ。しかし、こんなに調子よく犯罪が成就したら、しょっと白けるのも事実だ。
 
絶体絶命、危機一髪の一つや二つは混ぜておかないと。この映画では、間抜けなポリスがパトカーを盗られたり、SWATまで出動しているのに、警察もマスコミもまんまと猿芝居にひっかかったりするあたりが、ご都合主義の極みだった。
 
レインマン』のバリー・レビンソンが監督した、かなりいい加減な犯罪コメディだったが、中年男二人に女一人の3角関係が『冒険者たち』を思い出させた。
 
しかし、まぁ、欲求不満&不定愁訴主婦役のケイト・ブランシェットは印象的だった。金はしこたま持っているが、嫁さんのことはほったらかしにしている超多忙ビジネスマンの旦那に愛想をつかして、あてもなくメルセデスを転がして、どこでもないどこかに向かって走り出すのだが、たまたま、ビリー・ボブ・ソーントンを轢いてしまったことから、運よく(?)銀行強盗一味の仲間になって、二人の男と情を通じ、転落の坂を転がり落ちるかと思いきや、何となく1対2の大人のお友だち関係を作り上げてしまった。
 
普通は、こういう犯罪ものの場合、ファム・ファタール(運命の女)として登場してくる女というのは、どうしようもなく悪女のはずだ。『冒険者たち』のレティシアも、結果として自分も死に、マヌーの生命を奪う、悲劇的結末への伏線としての運命を背負っていた。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆ケイト(役名もケイトだった)の場合は、うんざりする結婚生活からさっぱり足を洗え、しかも、タイプの異なる二人の愛人を両手に花で、金の心配もなく余生を送れるとしたら、こんなおいしい話はない。犯罪ものは、主人公が悲劇的な最期を遂げる映画でないと認めない訳ではないから、こんなのもアリだろう。映画通を自認するタイプには受けないだろうが・・・。
 
ブルース・ウィリスは、あっと驚くロン毛で登場したけれど、かっこよさより気持ち悪さが勝っていた。ま、意外性は髪の毛でだけで、可もなく不可もなしだった。もうひとりのビリー・ボブ・ソーントンは、医者でもないのにあらゆる病名に精通してるインテリ男で、アメリカ人の病的なまでの健康渇望症というか、疾病恐怖症の感じをよく出していた。
 
一番おかしかったのは、銀行の守衛になりすまして「いつもの守衛さんはどうした?」という警官の質問に「膣炎がどうしたこうした」とワケの分からない理由をでっちあげて、煙に巻いて呆れ返らせていたところだ。
 
あのエンディングは、『ショーシャンクの空』のエンディングほどは、共感できるものではなかった。血と血糊の違いくらい鑑識でなくても分かるのじゃないか?(いや、『ガタカ』の主人公みたいに、血糊の袋の中に自分の血を入れていたのかも?)弾が貫通しないで体の中に残っていたというのもおかしい。爆発炎上した車の中から遺骨のかけらも出てこなかったのか?と、つっこみだしたら霧がない摩周湖だけど、監督もそんなことは百も承知で撮ってのだろう。◆解除◆
 
お蔵入りになった、もうひとつのエンディングの方が、まだしも新しいドラマの予感があって、よかったのじゃないかと思うけれど・・・。 もうひとつの、ドイツ版『バンディッツ』の方も観てみたい。
 
バンディッツ BANDITS (2001) アメリカ