『シービスケット』は、如何にもアメリカ人が好きそうなアメリカン・ドリーム話だった。

スパイダーマン』のトビー・マグワイアは、実はこっちの役柄の方が主流なんだろうと思う。才能はあるのに、チャンスに恵まれなかった若いジョッキー、レッドの自負と不安の綯い交ぜになった感じをうまく演じていた。
 
それにしても、競走馬は血統がものをいうのだが、このシービスケットも血統的にはそこそこなんだが、馬体が小さく、脚も曲がっていたので、評価が低かった。それに、子馬のときにひどい仕打ちを受けたのがトラウマになっていて、とんでもなく暴れ馬に育ってしまった。お馬さんも人間と似たようなものだ。 
 
シービスケットの馬主も、子供を交通事故で失って、嫁さんとも離婚してしまったというつらい経歴の持ち主だし、調教師の親爺さんも腕はいいのだが、はぐれ者だし、馬も含めて。全員が訳ありの人生(馬の場合は馬生か?落語家の名前みたいだ)を送っていたのだが、縁は異なもの、味なもので、たまたま全員が出会って、それなりに気が合ったのだろう。ここから、如何にもアメリカ人が好きそうな、アメリカン・ドリーム話の始まりだ。
 
実話に基づく映画では、『タイタンズを忘れない』のときは、ちょっと地味過ぎる展開で眠たくなったが、この映画も前半は3人の生い立ち(というか人となりの説明)に手間取って話が見えにくかった。◆◆ネタバレ注意◆◆しかし、何といってもギャンブルの王道=競馬の話だから、シービスケットとレッドは、人馬一体となって破竹の勢いで連戦連勝するし、大恐慌後のアメリカ社会のヒーロー待望の空気にピッタリ合致して、人気も鰻登りだ。この辺りからラストまで、好事魔多しの喩え通り、まだひと波乱もふた波乱もあるにはあるが、ま、観ている方は安心して観ていられる予定調和的な映画だった。◆解除◆
 
国民的人気の競走馬といえば、連敗記録を更新した(?)ハルウララだろうか?かつての名馬といえば、やはりハイセイコーだ。この馬、昭和47(1972)年の夏に地方競馬でデビューして、6戦6勝のまま中央に進出してきて、進出後4連勝したのだが、直後のダービーでは勝てなかった。ネットで調べたら、ちょっと意外な話が載っていたんで、引用させともらうと・・・ 
 
1970年、新冠の名門武田牧場で生まれたハイセイコーは、当時は生産頭数も現在よりずっと少なかったから、生まれてすぐ「日高で3本の指に入る」すごい当歳がいる。関係者で知らない者はひとりもいなかった。(中略)
 
中央入りしたハイセイコーの初戦は「弥生賞」。10頭の中には、終生のライバル・タケホープも、のちの天皇賞馬カミノテシオもいたが、ハイセイコー初芝)の単勝は110円。後年、地方育ちの無名馬が中央入りし…などと過剰に脚色して伝えられることも珍しくないが、ハイセイコーは生まれながらにして、また公営の大井で連戦連勝をスタートさせたときから、もうすでに全国区の「スーパースター」だったのである。「日刊競馬で振り返る名馬 ハイセイコー http://www.nikkankeiba.com/jra50/09/09.html
 
と、まぁ「ふーん。そうだったの」な話だった。でも、ハイセイコーはダービーで負けたのがよかったみたいで、負けてからの方が、人気は上がったみたいだった。 
 
話を映画に戻すと、最も印象に残った台詞は、調教師の親爺さんの『馬は見ているだけでもいいものだ』という台詞だ。脚を怪我して射殺されそうになっていた馬を譲ってもらった後で、何故あの馬を助けたんだと聞かれて、答えた台詞だ。サラブレッドは引退後、ほとんどが廃用といって食肉にされてしまうらしい。ペットじゃないのだから仕方ないいえば、そうかも知れないが、哀れなもんだ。
 
ところで、馬主役のジェフ・ブリッジスは、『フィッシャー・キング』 のDJ役をやっていたけれど、ええおじさんになっていた。ま、あの映画の公開から12年も経っているのだから、歳もとる。
 
この映画を観た後で、深夜にレース速報みたいな競馬番組を観たが、映像があまりにもしょぼくて、見るに耐えなかった。ま、この手の競馬番組を観ているのは競馬ファンだけだろうが、もう少しカメラアングルの研究をしたらどうか。ワンパターンだし、迫力不足すぎる。F1の車載カメラと一緒で、ジョッキーに小型CCDカメラつけさせたらどうだ?馬場のすぐ際にローアングルで固定カメラ置いておくだけでも、ど迫力のシーンが撮れると思うのだが・・・。
 
スポーツ中継も、結果を分からせることだけが目的じゃなくて、観客の目線では味わえないスポーツの醍醐味を見せるようにした方がいいインじゃないか。いつぞやのオリンピックの野球では、主審がカメラつけていた。あれだけでも、かなり迫力のある絵が撮れていた。
 
ところで、ウィリアム・H・メイシーみたいな競馬中継アナが実際にいたのだろうか?私的にはウルフが結構お気に入りだった。
 
シービスケット(2003)アメリカ SEABISCUIT