『マイ・ドッグ・スキップ』は、犬好きには堪えられない映画らしいが、猫派はやや冷静に観ることが出来た。
アメリカでベストセラーの自伝小説をもとにした、少年と犬のハートウォーミングストーリーだ。アメリカ人に限らず、犬好きには堪えられない映画らしいが、猫派なんで、やや冷静に観ることが出来た(映画を冷静に観てどうすんの!)。
この映画は、アメリカ人のノスタルジーを思いきりかき立てる映画なんだろう。犬がやたらと人なつっこいだけじゃなくて、主人公の少年が、はっきり言って、少々アカンタレなのと、しっかり者で、かわいらしいガールフレンドが出てくるのと、キレイで優しそうなお母さんとちょっと頑固だけど慈愛のある眼差しで見守ってくれているお父さんと、戦争から逃げ帰ってきた隣のおにいさんと、食料品店のアフリカ系アメリカ人の親爺さんと、周りの人はいい人で、車は丸っこいクラシックカーで、悪役だったのは、いじめっ子の3人組(そのうち仲良しになる)と密造酒の売人AとBの二人組くらいで、戦争中といっても、どこか街はのんびりしていて、いい時代だったんだなぁと振り返ることが出来るのだろう。
◆◆ネタバレ注意◆◆ 『山の郵便配達』で、年老いた郵便配達人の後を地味について行っていたワンコの「次男坊」の方が、けなげだったんじゃないかと思う。
この映画で号泣したという人が結構いるらしい。どこが泣けるポイントなのかよく分からない。密造酒の売人Aにスコップで殴られて、あのとき犬が死んでしまったのなら、泣くというのも分からないこともないが、獣医の懸命の救命治療の甲斐あって、一命を取り留めたんだから拍手喝采、「よかった。よかった」とか言って、普通はニコニコ顔になるのじゃないの?
犬は子供にとって無二の親友になるらしいが、残念ながら、うちは犬を飼ってなかった。そのせいか、犬が飼い主を見るときの「飼い主命」のよう
なつぶらな瞳がちょっと苦手だったりする。砂糖珠代ちゃんのカメラ目線に近いものがある。猫は絶対あんな目つきはしない。猫は何か食べものが欲しいときに、猫なで声ですり寄ってくるときですら、目はいつもクールだ。
映画のラストで、ベッドによじ登りたいのだけれど、登られない老犬は、先日18歳の天寿を全うした、わが家の老猫の最期の姿と重なって、老いの悲哀を感じた。が、犬は老い先の短さを嘆いたり、空蝉の世を儚んだりはしないらしい。
ところで、ペットロスの問題は、高齢化社会のこれから一層深刻になるだろう。何しろ老人所帯の4軒に1軒は犬を飼っているらしい。犬より人間が先に逝ってしまうのも困ったことだが(残された犬は、誰が世話をするの?)、犬に先立たれた後の寂しさは、老境の心細さと相まって、相当落ち込むだろう。猫は犬ほど主人思いではないから、多少はダメージが少ないか?
今のところはクールさを装ってるが、そうでもないみたいだ。特に夜中に目覚めて、用を足しに行った帰りに、足元をうろちょろする小さいのがいなくなったのが寂しい。
ベッドの上で居眠りしていたスキップは、あのまま死んでしまったのかしら? ◆解除◆
マイ・ドッグ・スキップ My Dog Skip (2000) アメリカ
監督:ジェイ・ラッセル
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