『ルル・オン・ザ・ブリッジ』は、あらんことか、エンディングに御法度というか、禁じ手を使っていた。

この映画、愚妻と一緒に観ていたのだが、途中で「なぁ、この映画、ちゃんとオチあんの?!」と念押しするものだから、「心配せんでいい。最後になったら、ああ、なるへそ、そういうことかという、いいオチがあるはずだ。この前の『スモーク』もそうだったろう。まかしとかんかい。くしゃみ3回ルル参上だ」と、太鼓判を押していたのだが・・・。
 
一向にオチなかった。フォークボールが落ちないピッチャーのようだ。ヒネリが足らないというのか、もともとこの監督、ヒネル気がなかったのか。あらんことか、この映画、エンディングに御法度というか、禁じ手を使っていた。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆それにしても、『カリートの道』も、映画の冒頭で、主人公が撃たれて救急車で病院に担ぎ込まれて、集中治療室に運ばれる数分の間に、これまでの人生のさまざまなシーンが走馬燈のように頭の中を巡ったという話だったが、この映画は、もう少し手がこんでいた。『シックス・センス』といい勝負だ。しかし、まだしも、あの映画の場合は、オチのあとで、手練れの奇術師のトリックにひっかかったような、うまく騙された感があった。こんなはっきりしない夢落ち映画に付き合わされた我ら夫婦はいい面の皮だった。
 
夜道でつまずきそうになった男(死んでるいるのかどはっきりしないが、額にぽっかり穴が開いていた)の側に転がっていたバッグ(を盗んだのか拾たのかはっきりしない)の中にあった石ころ(暗くすると妙な光を放射するのだが、あれって、呪いとか魔法みたいなものがかかっている賢者の石かなにかか?はっきりしない)を取り戻しに来た悪の一味(かどうかもはっきりしない)に捕まって、さっさと石の在処を白状しろという尋問(されているのかいないのかはっきりしない)の間中、のらりくらりと言い逃れしていて、最後に窓から逃げ出したのだが、そのときすでに、石は・・・。
 
と、まぁ、話は監督の思惑通りにワケの分からない展開をしていくのだが、そもそもこの親爺とヒロイン女の子(どことなく宮沢りえに雰囲気が似ていた)との出会いからして、なんでやねん?だった。いくら縁は異なもの味の素といっても、合理的な説明を一切しないで、運命的に出会ってしまったのだ、好きになってし待ったものは仕方がないじゃないかみたいな尻軽娘のお手軽恋愛話なストーリー展開はないだろう。今どきの若いものは、友だち以上の付き合いに進むのが難しいと何かで読んだ気がするが、どこの世界に、「一目会ったその日から、赤い糸で繋がれていたのね。わたしたち」みたいなはちゃめちゃなラブストーリーにマトモに付き合うお人好しがいるのだ?
 
この映画のように、突然女の一人住まいの部屋を訪ねて行っても、門前払いされるのがオチだろう。いくら、サックス吹きとしてそこそこ有名だったとしても、普通は部屋に入れないだろう。しかも、会ったその日のベッドインは、いくらパワーストーンの不思議な導きだといっても、そんなインチキ通信販売みたいな話は信じられないと思いながら観ていたのだが、今になってみると、夢というのはなんでもありだから、たとえ悪夢でも、本人の都合よく事が運ぶのは仕方がない。人生は邯鄲の夢というくらいだから、ま、「真夏の夜の夢」にはまだ早いが、一夜の夢物語として負けといてやろう。◆解除◆
 
ルル・オン・ザ・ブリッジ Lulu on the Bridge (1998) アメリカ