『コールドマウンテン』は、かなりご都合主義の目立つラブストーリーだった。

かなりご都合主義の目立つラブストーリーだった。しかし、観ていてあほらし屋の鐘の連打とまではいかなかった。絵づくりはかなりしっかりしていて、見応えはまずまずだった。それにしてもこの映画、主人公のジュード・ロウが扮する田舎の純朴な二枚目、インマンが南北戦争の戦場から遙か彼方の故郷コールドマウンテンを目指して旅するロードムービーの部分と、もうひとりの主人公のニコール・キッドマンが扮する鄙には不似合いのお嬢さまエイダの、お嬢ライフからの完全自立話のふたつが交互にでてくるのだが、時系列的な整合性が、初めのうちはよく分からなかった。
 
インマンの身には、災難が何度も、何度も、何度も、もういい加減にしてぇ〜!というくらい振りかかるのだが、その度に、都合よく救いの手がさしのべられる。しかも、1回を除いては、すべて女が絡んでいる。特に、ヤギのおばさんのエピソードは、『ダウン・バイ・ロー』で、南部のジャングルの側にイタリア人の寡婦がひとりで住んでいたという設定といい勝負をするくらいの、とんでもないご都合主義だった。いくらジュード・ロウが男前だといっても、あんなにうまいこと助けられるというのも、ちょっとなぁ・・・。
 
それに、あの戦争未亡人は、あの後どうなったんだとか、牧師が孕ませたアフリカ系アメリカ人の女の子はどうしてるのかとか、気になったまま観ていたのだが、特典ディスクの未公開シーンを集めたのを見て、初めて後日談が分かった。この映画、それでなくてもちょっと長めだが、ストーリーのつながりを分からせるための、どちらかといえば、ら説明的なシーンを編集段階で端折りすぎた感がある。 
 
ところで、あの戦争未亡人役の女優が、『レオン』のマチルダをやっていたナタリー・ポートマンだった。いくつになったんだ?この娘。1981年イスラエルの生まれだから、この映画の時で25か。“3歳の時から米国で暮らし、8歳の時からベジタリアン(タダの偏食と違うか?)。ヘブライ語、フランス語、日本語を話す。(へぇ、日本語オッケイなの?)ハーバード大で心理学を学ぶ。(インテリじゃん)「オードリー・ヘップバーンの再来」と言われている(本当か?)”らしい。『スターウォーズ・エピソード1・2・3』にもでてるいたんだって。よかった。よかった。なんだか久しぶりに会った知り合いの娘さんのような気がする。
 
ニコール・キッドマンのやっているお嬢生活も年季が入っている感じで、何しろ「役に立つことは何もしてはダメ」という厳格(?)な教育方針で育てられたというのだから呆れる。花は生けられるけれど、育て方は知らない。レース刺繍は出来るけれど、繕いものは出来ない。もちろん、料理も、洗濯も、掃除もやったことがない。食べるものなくなって、『マレーナ』みたいに春をひさがなければならないところまで落ちぶれるんじゃないかと、他人事ながら心配してしまった。そんな彼女も、レニー・ゼルウィガーが扮する、流れ者ルビーの薫陶のおかげで、立派に自立した女に育って行くのだが、手のアップの時に、節くれ立ったごつい手に映っていたのは、演出だろうか?
 
しかし、女流れ者ルビーが突然あらわれて、孤立無援のエイダを助けてやるというのも、なんとなくご都合主義っぽい筋立てだ。普通ホームレスとか、戦前のアメリカでいえば、ホーボーとかは、男というのが相場だろ。こんな働き者のルビーが、流れ者になったというその辺の事情は、しっかり説明されていなかった。
 
ま、ドンパチ系は好かないから、戦争を描いてあっても、こういう一兵士の物語の方を贔屓にするのだが、アメリカでも、日本でも、戦争中には、この映画の義勇軍の脱走兵刈りだとか、日本の憲兵とか、権力を笠に着て、裏で悪事を働く輩がでてくるのが、困ったものだ。
 
それと、いつも思うことだが、お尻丸出しのおばさんのシーンは、いらないと思うけれど・・・。ジュード・ロウニコール・キッドマンの濡れ場も、そりゃ、好き合っている若いもの同士だから、激しくなるのは仕方がないが、もっと別な見せ方があっただろうと思う。ありゃあ、サービスカット以外のなにものでもない。
 
◆◆ネタバレ注意◆◆ 山の中で突然ふたりが出会うシーンも、未公開シーンを観たら、なんとなく納得できるけれど、観る前は「そんなバナナ。何故こんな山の中で、うまいこと出会えるの!」と画面に向かって、つっこんでしまった。ハッキリ言って、この映画、未公開シーンを入れて、きちんと編集し直した方がいいと思う。
 
最後に、ジュード・ロウニコール・キッドマンの間にできた娘にしては、あの娘、あまり可愛くなかったな。プロデューサーの孫とか、親戚の娘と違うか(疑)。◆解除◆ 
 
この映画、確かにレニー・ゼルウィガーの女流れ者ルビーは、おいしい役だった。
 
コールド マウンテン(2003)イギリス・イタリア・ルーマニア Cold Mountain