『ムーラン・ルージュ』は、悲恋のペーソス感がまったく感じられなかった。

こういうミュージカル映画はきれい・楽しいだけで満足しろというのかも知れないが、金が掛かっている割にストーリーがお粗末すぎた。◆◆ネタバレ注意◆◆だいたい労咳病みで、もうすぐ死ぬかという女があんなに大声て歌ったり、そこいら中を駆け回って踊ったり…

『バンディッツ』は、つっこみだしたら切がないが、監督もそんなことは百も承知分で撮ってたのだろう。

犯罪映画とはいうものの、人は殺さないし、激しい格闘シーンもないし、裏切りも、密告も、なにもない。想定外のハプニングといえば、交通事故くらいだ。しかし、こんなに調子よく犯罪が成就したら、しょっと白けるのも事実だ。 絶体絶命、危機一髪の一つや二…

『めぐりあう時間たち』は、いかにも女受けを狙ったタイトルだ。「時間」に「たち」なんかつけるな。

この映画、なんの予備知識もなしに観たので、なにこれ?と思いながら最後まで観てしまった。3つの時代と3つ場所で、映画的には同時進行で進んでいく3つの話が、それぞれ呼応してるのだろうとは思っていても、繋がりが分かりにくかった。最近の映画でよく…

『甘い生活』という、いかにもデカダンムードいっぱいのタイトルに騙された。

『甘い生活』という、いかにもデカダンムードいっぱいのタイトルに騙された。やはり甘い話には気をつけないといけない。この映画、公開当時イタリアで物議を醸し、そのおかげで大ヒットしたらしい。日本もまだまだヨーロッパの巨匠崇拝の時代だったから、結…

『東京物語』は、地方出身者弾劾映画だったんじゃないか?

戦後の小津作品のなかでナンバー1の評価を得ているが、正直少々疑問。というより、この映画の評判が高いのは、外国人監督が贔屓にしてるからで、われわれ日本人の濁りのない目から見たら、外人さんは甘いとしか言いようがないというのが、本稿のスタンスだ…

『フェリーニの8 1/2』は、いわば私小説の映画版、私映画になっているところがミソだ。

なるほど、この映画の前に監督した映画が8本と半分(共作が1本あるので、それを1/2とカウントしている)あったから、この題をつけたのか。洒落たことをするもんだ。 この作品は、フェリーニの最高傑作と言われているが、DVDを観ているうちに、てっきり…

『ショコラ』は、最初はビターで、そのうちセミスイートになり、ラストは甘甘のホットチョコレートだった。

主人公のジュリエット・ビノシュは、老けた『アメリ』のようだ。顔も何となく似ているが、やることもそっくりだった。といっても、こちらはさすがに小娘じゃないから、あまりにもくだらないいたずらはしない。ちょっとしたお節介程度だ。 チョコレートは胸焼…

『バグダッド・カフェ』には、映画の見せ物性が残っていた。

DVDのパッケージには、主人公のジャスミンがモハド砂漠のバグダッド・カフェに舞い降りたとあったが、実際はトランクを引きずって歩いてやって来た。私自身はデブ専というのではないが、ぽっちゃり系の女の人が嫌いではない。もう決して若くはないドイツ人中…

『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、映画のショートショートというか、小話のよううなものだった。

またぞろジム・ジャームッシュだ。今回は『ナイト・オン・ザ・プラネット』。この映画は5話からなるオムニバスもので、映画のショートショートというか、小話のよううなものだった。英語では、スライス・オブ・ライフか?! この手の監督は、起承転結の必要…

『けだもの組合』は、話の途中に無関係なコントが挟まっているという感じだった。

マルクス・ブラザースの喜劇映画だが、いまいちついて行けなかった。いつものようにグルーチョは相手役をコケにしまくっているし、ハーポはエキセントリックなギャグを連発するし、チコは器用にピアノを弾くし、ザッポは相変わらず無芸だしと、それぞれまあ…

『ダウン・バイ・ロー』は、「いいかげんにせんかぁ」というくらい、監督のご都合主義が目立った

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に出ていたジョン・ルーリーが、間抜けな女衒の役でまた出ている。よほど監督のお気に入りなんだろう。ま、あんなに容貌魁偉な役者は、アメリカ中探してもそうはいないだろ。それに『ライフ・イズ・ビューティフル』の…

『デッドマン・ウォーキング』は、尼僧の行為にガツンとどやされた感じだった。

無償の行為にぐっと来る方だが、この映画の尼僧の行為はぐっと来るどころか、ガツンとどやされた感じだった。アメリカの裁判制度および死刑囚への対応が、実際にこの映画のようであるのかないのか、詳しくは知らないが、どんな犯罪者にもその犯罪者の側に立…

『勝手にしやがれ』は、55年もののヴィンテージだが、どこも腐っていなかった。

ジャン=リュック・ゴダールの長編商業映画デビュー作だ。この映画を初めて観たのは、多分1970年前後じゃなかろうか。どこかの名画座だった。ゴダールの名声は映画好き青少年の間では、神様のような存在として定着していたが、ゴダール本人はさらなる革…

『ジョー・ブラックをよろしく』ほど水増しした映画というのは珍しい。

あの人喰いハンニバル・レクターのアンソニー・ホプキンスも出ている映画だから、もう少しましな映画かと思ったら、何とも人を喰った映画だった。しかも、長すぎる。3時間もかけないと表現できないような込みいった話じゃないだろ・・・。 コーヒーショップ…

『ゴールキーパーの不安』は、ワケの分からない前衛小説を原作にして、分かりやすい映画になるはずがない。

また性懲りもなくヴィム・ヴェンダースを観てしまった。それでもまだDVDが9本も残っている。酔った勢いで、ネットオークションでまとめ買いしてしまったのが、そもそも間違いだった。 しかし、この劇場用長編デビュー作で、あ奴は一体何が言いたかったのか…

『シカゴ』は、最後の舞台のシーンを愉しむだけで、充分元をとった気になる。

キャバレーもの、ダンサーものといえば、ご贔屓はライザ・ミネリの『キャバレー』だったが、この映画もかなりよかった。同じダンサーものでも『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、なんともはやダーク&ヘビーなお話で、唯一の救いはこれも『シェルブールの雨…

『至福のとき』は、大人のファンタジーと言ってしまえば、身も蓋もないのだが・・・。

『初恋のきた道』のチャン・イーモー監督の「しあわせの3部作」の最終章とDVDのパッケージの裏面には書いてあるが、心温まる感動と涙の物語ではなかった。ま、心が冷え冷えすることもなかったが、感動作ではないし、幸せにもならなかった。 落語というか、…

『スタンド・バイ・ミー』は、キムタクには先天的になれなくとも、いい奴にはなれることを教えてくれる。

この映画の主題歌は、ジョン・レノンが歌ったカバーバージョンが特にお気に入りだが、ベン・E・キングのオリジナルもいい感じだ。スティーブン・キングの原作も結構よかったが、この映画の方がもっとよい。映画の主役は、ゴーディ役のウィル・ウィートンだろ…

『アイ・アム・サム』は、しんみり泣ける話だが、こういうシチュエーションの場合は泣かない。

この映画はビートルズナンバーがふんだんに聞ける。 ビートルズ好きにはこたえられない映画ではある。ビートルズは中学2年の秋に日本デビューした。最初に聴いた"Love Me Do"がボディブロウ気味に効いているところに、次の"Please Please Me…

『ロード・トゥ・パーディション』は、ヒットマンを変質者にしたから、ヒットしたんだと言われたら、黙るしかない。

元々、ポール・ニューマンがお目当てで観ようと思ったのだが、全然ギャングの親分には見えなかった。平気で人殺しを命じるような性根の腐った屑男の感じがしない。やはり人品骨柄の問題だ。ポール・ニューマンは汚れ役に向かない。トム・ハンクスもインテリ…

『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』の犬の鳴き真似で非情な現実に精一杯抗議するシーンに胸が詰まった。

スウェーデン映画というと、かつてはイングマール・ベルイマンだったが、最近はラッセ・ハルストレム((舌咬みそうな名前だが)らしい。といっても、この映画まではスウェーデンで製作されていたが、これ以後はアメリカに渡って製作しているから、アメリカ映…

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』ほど辛気くさい映画を撮る監督も監督だが、観る方も観る方だ。

『パリ、テキサス』は、まだテキサスリーガースヒットだったが、この映画はまるっきり淡々狸映画だった。いかにもロードムービー、なんとニューヨークから五大湖畔のクリーブランドまで車で出かけて、とんぼ返りで南のフロリダまで激走するのだから。かと言…

『パリ、テキサス』は、てっきりパリからテキサスまでの長い旅路の物語だと思いこんでいたら大違いだった。

今回はロードムービーのもう一方の雄、ヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』だ。ありゃ、これ西洋股旅物と違うの?この題名にだまされて、てっきりパリからテキサスまでの長い旅路の物語だと思いこんでいたら、大違いだった。タイトルをよく見ると『Par…

『ノー・マンズ・ランド』の事態を悪化させたのは、悪魔の兵器といわれてる地雷だ。

ボスニア軍とセルビア軍が睨み合っている「ノー・マンズ・ランド」と呼ばれている中間地帯の、そのまた真ん中の塹壕に取り残されたボスニア軍兵士のチキとツェラとセルビア軍兵士のニノの3人が主要な登場人物だ。この映画のセルビア軍側は装備もわりにきちん…

『カサブランカ』は、思わず『ボギー!あんたは男だ』と叫んでしまいそうになった。

『カサブランカ』直訳すれば「白い家」。地名だから「白屋敷」とでも呼ぼうか。別に漢字を当てる必要はないけれど、ニューヨークを紐育と書いたり、桑港、華盛頓、倫敦、巴里、伯林など、都市名の当て字が結構ある。阪急電車の宝塚線には「雲雀丘花屋敷」と…

『デッドマン』は、「ええっ、何すんのん?」の連続だった。

開拓時代の西部を舞台にしているが、この映画を異色ウエスタンと片づけるには変わりすぎている。ほとんどカルト教団のプロモーションムービーだった。少なくともその手のにおいがぷんぷんしている。この映画の世界に引き込まれるような連中が、あの教団にも…

『ルパン三世 カリオストロの城』は、可憐なだけの女の子像を生みだした宮崎駿も罪作りなおっさんだと思った。

近頃、若い男の間で結婚相手に「お姫様願望」があると何かで聞いたが、このアニメを観るとその意味がよく分かる。と言っても、このアニメができたのは、今から35年以上も前だが、確かにこのアニメのヒロインのようなな可憐な乙女なんかこの世にいるはずが…

『ファントム・オブ・パラダイス』は、デ・パルマ監督の風変わりさが前面にでた映画だった。

全体にかなりいい加減で、かなりグロなのだが、下品というほどでもないという微妙なバランス感覚があった。「オペラ座の怪人」を奇才デ・パルマ監督がロックミュージカルに風アレンジした異色作という前評判で観たのだが、確かに異色だった。全体の印象とし…

『リバー・ランズ・スルー・イット』は、釣りのシーンだけを眺めるでもなく眺めていると、心が喜ぶ。

フライフィッシングを始めて、かれこれ40年近くになる。近頃は体力的に渓流の遡行がきつくなってきたのと、あまりにも魚が釣れてくれないので、フライフィッシングに出かけるのは極端に少なくなってしまった。というか、この4・5年は釣行していない。 そ…

『ガープの世界』は、いたってノーマルな男が蒙ったとんでもない悲劇だ。

何はともかく、昨年亡くなった故ロビン・ウィリアムズ氏の冥福を祈って、黙祷。希代のコメディー役者が、私生活では、「『禁酒状態でうつ病と初期のパーキンソン病と闘っており、パーキンソン病について公表する準備ができていなかった』と奥さんが告白して…